今回の楽しむ会では、一般社団法人トナリノさんとコラボし、3人のライターさんに体験・取材・執筆をしていただきました。
ライター記事 第2弾は、草木染め担当のMICHIさんです。
【一期一会の「ゆず」草木染め】
~(株)京屋染物店×北限のゆず研究会のコラボレーション~
2月25日(土)、北限のゆずを楽しむ会の草木染めを親子で体験しました。その様子を紹介したいと思います。
今回の草木染めは、一関にある京屋染物店の染職人である髙橋眞大(まひろ)さんと堀越真由さんが、1か月に及ぶ試行錯誤の末に考え出した「ゆずの枝と葉」を使ったもの。
お二人の経験では草木染めには果実や野菜の皮、植物を使うことが多かったそうですが、今回は「剪定作業で捨てられる枝を使って染め物ができないか」という北限のゆず研究会の想いを受けて生まれました。
ゆずの草木染めは何色に染まる?
部屋に入ってすぐ、ふわ~っとゆずの香りに包まれました。もうそれだけでテンションが上がります。参加者は子どもから大人まで、びっしりと席が埋まっていました 。草木染めは年齢問わず親しまれていることが分かりますね。
ここでみなさんに問題です!
ゆずの枝は薄い緑色、葉は深い緑色、花は白色ですが、布は何色に染まるのでしょうか。予想では、茶色っぽいのかな?という気がしますが……。
会場では「一体どんな色になるか」と期待に胸はずむ雰囲気の中、2時間の体験教室がスタートしました。
最初に、ハンカチに模様を付ける絞り方を教えてもらいました。用意された4パターンの見本を無視して作業を始めた我が子。慌ててやり直しさせようとしたら、髙橋さんが優しく「どれも正解ですよ」と声をかけてくれました。
私は、はっとしました。見本通りにするのも、基本を元に自由に発想するのも、自分で考えて決めた方法ならどれも「正解」なのです。子育てで余裕のない生活に、ああしなきゃ、こうしなきゃとルールにしばられていた心が解放されたような瞬間でした。
草木染めの作業は、精練(せいれん)→濃染(のうせん)→煮出し→染め→媒染(ばいせん)の順で行います。今回の教室では「染め」から体験。媒染とは色素を定着させる工程のことで、今回はミョウバン(アルミ)を使用しました。植物そのものの色を出すにはミョウバンを使うのが最適 なのだそうです。
結果は何色?ゆずの無限の可能性
では問題の答えです。正解は「黄色」。
「やっぱり!」という方もいるかもしれませんが、緑色の枝や葉の内部に、ゆずの果実の源となる色が隠れているって自然の神秘に思えてきます。
ゆずの枝を材料にした染め物が初めてだった髙橋さんらにとって、これほどの「黄色」になるとは思いもよらなかったそうです。(媒染液によって色が変わります)
一般的な草木染めに対し、ゆずの場合はより多くの枝や葉を使うのだとか。色素が薄すぎても濃すぎても素材の持ち味を出せません。今回の枝葉の分量は、何度も失敗したことで成し得たお二人の情熱の賜物でもあります。
講師の髙橋さんから「ゆずの草木染めのいいところは、まず香りです。そして肌が荒れずにしっとりするんです。他の草木染めでは肌がカサカサしがちなので」とお聞きしました。生地にはゆずの保湿成分が入っているということで、肌にとっても優しそうですね。
また、堀越さんからは「こんなに黄色になるとは正直びっくりしました。模様も一人ひとり違うし、媒染に使う金属の種類によっても全く違う色合いになるんです。今回の挑戦は今後に生かせそうです」という言葉をいただきました。
目(色)で楽しみ、鼻(香り)で心地よい気分になれるなんて、ゆずの可能性は無限大なのだと感じてしまいます。
(一番左:堀越真由さん)
お子さんと一緒に参加したママからは「この布でお弁当を包むのが楽しみ!」「ハンカチや三角巾にして使うのも可愛くていいかも~」などの声も。親子でお揃いアイテムにしてもいいですね。爽やかな黄色が春の陽だまりのようで気分もルンルンしてきそうです。
参加した方々とゆず茶を飲み和気あいあいと過ごした時間。そして、ゆずと草木染めでつながる縁。一緒に作った楽しい思い出と共に、皆さんの心をあったかく染めているようでした。
もしまたこのような機会があったら、あなただけの「世界で1つだけの作品」を作ってみてほしいです。髙橋さん、堀越さん、そして「北限のゆず研究会」の皆様、一期一会の出会いをありがとうございました。
(記事:MICHI)